主な研究テーマ

私たちは、植物がもつ生理機能・代謝システムを分子レベルから個体レベルで理解し、その知見を植物の成長促進、環境適応、機能性向上へ応用することを目指しています。
主な研究テーマは次の3つです。

  • 表皮細胞分化遺伝子の新規機能とその制御機構の解明
  • 光合成および代謝プロセスの解析
  • 機能性物質を強化した植物の開発

表皮細胞分化遺伝子の新規機能とその制御機構の解明

本研究では、表皮細胞分化遺伝子の新たな生理機能の探索と、その制御機構の解明に取り組んでいます。
植物の表皮細胞の一種である根毛は、根が水分や栄養分を吸収する際に重要な役割を果たします。実際に、表皮細胞分化に関わる遺伝子を改変して根毛形成能力を高めると、植物の新鮮重量が増加することが確認されます。一方で、これらの遺伝子を組換えた植物では、根毛形成以外のさまざまな生育過程にも影響が生じます。このことから、表皮細胞分化遺伝子は本来の分化機能以外に加え、より広範な生理機能を担う可能性があります。
本研究では、こうした遺伝子の新規機能を明らかにすることで、トマトをはじめとした作物の生育促進や品質向上につながる基盤技術の構築を目指しています。得られた知見は、栽培効率の向上や省力化につながり、より高品質な作物を安定的に生産できる農業の実現に貢献することが期待されます。

表皮細胞形成遺伝子が根毛分化と成長に与える影響。
遺伝子組換えにより表皮細胞形成遺伝子の発現を変えたシロイヌナズナの根の拡大写真と重量の比較

光合成および代謝プロセスの解析

本研究では、植物の成長を効率的に促進することを目指し、光合成に関連する代謝プロセスの解明に取り組んでいます。光呼吸に関与する酵素であるカタラーゼは、通常、葉のペルオキソームに局在します。しかし、一部の植物ではカタラーゼの局在性が異なることが予測されており、こうした違いが光呼吸によって生成される二酸化炭素量に影響を与えている可能性があります。これは、カタラーゼの局在が変わることで、光呼吸過程で生じる過酸化水素の処理効率が変化し、その結果として光呼吸の流れ(代謝フラックス)やCO2の放出量が変動するためです。
そこで本研究では、植物カタラーゼの細胞内局在とその輸送メカニズムを詳細に解析し、カタラーゼがどのように細胞内で機能しているのかを明らかにします。これらの知見は、光合成効率の向上を通して植物の成長を促進するだけでなく、環境ストレスに強い植物の育成にもつながると期待されます。

シロイヌナズナにおけるカタラーゼの細胞内局在解析
GFP:GFPを融合したカタラーゼの発現。RFP:ペルオキシソームマーカーの発現。Merge:両蛍光の重ね合わせ像。

機能性物質を強化した植物の開発

本研究では、植物が本来もつ代謝機能を高度化するための基盤技術の開発に取り組んでいます。植物は、環境の変化に適応しながら多様な機能性物質を生産する能力を備えています。これらの代謝経路を遺伝子レベルで改良することで、植物により高い機能性や付加価値を付与することが可能になります。例えばアスコルビン酸(ビタミンC)をはじめとする抗酸化物質の蓄積量を増加させる改良は、植物自身の環境ストレスへの耐性を高めるだけでなく、人の健康に資する高機能な食品素材としての価値向上にもつながります。このように、機能性物質を強化した植物の開発は、農業生産性の向上と、健康に寄与する食品開発の双方に貢献することが期待されています。

遺伝子組換えによる機能性物質(アスコルビン酸)の強化と塩ストレスに対する耐性

本研究で使用している植物はこちら
実験植物


広島大学生物生産学部

植物機能開発学研究室

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