研究概要

私たちは、植物が生きていくうえで欠かせない「代謝」や「細胞分化」に着目し、植物がどのように成長し、環境に適応しているのか、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。

研究では、CRISPR-Cas9による遺伝子編集、アグロバクテリウム法による形質転換、qPCRによる遺伝子発現解析、さらに蛍光タンパク質融合体と蛍光顕微鏡を用いたタンパク質の細胞内局在解析など、分子生物学・細胞生物学的技術を利用しています。これにより、植物の機能を分子レベルで理解し、応用可能な知見へとつなげることを目指しています。

特に、表皮細胞分化遺伝子の機能解析や、光合成・光呼吸に関わる代謝経路の解析、機能性物質の生合成経路の改良といった研究は、環境ストレスに強く、栄養価の高い作物の開発に活かすことができます。また、植物が土から栄養をより効率的に吸収できるようにすることで、肥料使用量の削減や環境負担の軽減にも貢献できます。

私たちは作物の生産性や品質の向上を図るとともに、持続可能な農業の実現や気候変動に強い植物の開発を通じて、現代社会が直面するさまざまな課題の解決にも貢献することを目指しています。


主な研究テーマ

表皮細胞分化遺伝子の機能に関する研究

表皮細胞分化遺伝子の新規生理機能の探索とその制御機構に関する研究を行っています。最近になって表皮細胞分化遺伝子変異体がこの研究は、トマトの生育や品質向上の強化を目指しており、農業の効率化に貢献することを目指しています。例えば、表皮細胞分化遺伝子の新たな機能を解明することで、トマトの栽培効率を高め、より少ない労力で高品質な作物を生産することが可能となります。

光合成と代謝に関する研究

樹木の成長を促進するために、光合成の代謝に関する研究を行なっています。光呼吸に関与するカタラーゼは通常、葉のペルオキソームに局在しますが、針葉樹のカタラーゼは局在しにくいことが予測されています。この違いが、光呼吸によって生成される二酸化炭素量に影響を与えています。そこで針葉樹カタラーゼの細胞内局在と輸送機構を解析することで、カタラーゼがどのように細胞内で機能しているのかを理解します。この知見を活かして、植物の成長を促進し、気候変動や環境汚染に強い植物の育成に貢献することを目指しています。

機能性物質を強化した植物の開発

ストレスに強い植物や栄養価の高い作物を作り出すための代謝機能の改良を行っています。これは、健康志向の食品開発や環境変動への対応にもつながります。


広島大学生物生産学部

植物機能開発学研究室

〒739-8528 広島県東広島市鏡山1丁目4−4